フリーランスにとって自分の身体は、大切な資本です。
フリーランスとして、せっかく自分だけのスキルを身につけて、高単価なお仕事を受注できたとしても、働く自分の健康が損なわれていては、クライアントに喜んでもらえるお仕事をこなすことができないかもしれません。
フリーランスにとって自分の健康を管理することは必須の条件と言えるでしょう。
しかしながら、どれだけ健康に気をつけて、健康管理をしても限界はあります。どうしても健康上に問題がありお仕事を休まなくてはいけない時もあるかもしれませんね。
この記事では、そんなフリーランスの健康と生活を支えるためのセーフティネットである医療保険についてのお話をします。医療保険についてしっかりと知っておくことで、自分の健康に何かが起きてしまったとしても、少なくとも経済的には困ることがないように備えましょう。
正しく自分にあった医療保険を選ぶ知識を身につけることが、フリーランスとしての活動や万が一の時の自分と一緒に暮らす家族の暮らしを守ることに繋がります。
そもそも医療保険ってなんだろう?
医療保険の役割
医療保険は、医療機関で治療や入院をした時に発生する医療費の一部、または、全部を保険者が給付してもらえる保険です。
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医療機関で治療や入院をした時に発生する医療費の一部、または、全部を保険者が給付してもらえる保険
保険者とは、国や市町村、保険会社などのことです。もちろん、タダで払ってくれるなんてムシのいい話ではありません。
医療保険を利用するために、私たちは保険者に保険料と言う形で定期的にお金を支払っているのです。
保険者 | 国・市町村・保険会社 |
被保険者 | 保険を受ける人 |
日頃から保険料を準備することで、万が一、治療や入院で大きなお金が必要なった時にも困らないようなセーフティネットの役割を医療保険は担っているのです。
公的医療保険と民間医療保険の違い
保険料について理解するために、公的医療保険と民間医療保険の違いについて解説しましょう。
公的医療保険制度は、国が運営する制度で、国民皆保険制度という仕組みをとっている日本では、国民全員がこの制度を利用しています。
みんな加入しているならば、十分じゃないかと思うかもしれませんが、公的医療保険制度も万能でありません。治療内容によっては、公的医療保険だけでは、患者の負担が大きくなりすぎてしまうケースもあります。
そこで登場するのが、民間の医療保険です。
民間の医療保険は、公的医療保険ではカバーしきれない保障やサービスを提供しているのです。
公的医療保険制度 | 国が運営する制度 |
民間の医療保険 | 公的医療保険ではカバーしきれない保障やサービスを提供している保険 |
フリーランスのための公的医療保険入門
公的医療保険の種類
公的医療保険とはいえ、その種類は様々です。どのような職種や組織に就くかによって、契約する保険の内容も異なります。
公的医療保険の種類は、次のようなものがあります。
特にフリーランスの人にとって重要なのは、健康保険と国民健康保険です。
健康保険
健康保険は、企業の従業員や日雇い労働者などの職種の人が加入する保険です。
保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ)や各種健康保険組合です。
共済保険
次に共済保険は、国家・地方公務員や私学の教職員などの公務を職業とする人が加入する保険です。
共済保険の保険者は各種共済組合です。
船員保険
その名の通り、船舶の船員などのための保険で、社会保険庁や全国健康保険協会が運営しています。
国民健康保険
国民健康保険は、フリーランスがしっかり理解しておくとよい保険です。
この保険はフリーランスや自営業者、退職者などが対象の保険で、市町村や各種国民健康保険組合に保険料を支払います。
保険料は地域によって異なり、前年の世帯収入等に応じて計算されるので具体的な保険料はその地域にて調べなくてはいけません。
後期高齢者保険
後期高齢者保険は、75歳以上の人や65~74歳までの人で一定の障害の状態にある人を対象とした保険です。
後期高齢者医療広域連合が保険者を担っています。
フリーランスはここに注目!健康保険と国民健康保険の違い
次に健康保険と国民健康保険についての違いについてまとめてみましょう。
この健康保険と国民健康保険の違いこそがフリーランスに本当に知っておいて欲しい内容です。
健康保険と国民健康保険の共通しているところと、違いをはっきり自分の中での理解を深めましょう。
ちなみに、上でご紹介した共済保険や船員保険も、ほとんど健康保険と同じような内容です。
フリーランスは自分で手続きをしなくてはいけない
健康保険は、会社員や公務員のための保険で、保険料の手続きを所属している組織が行ってくれるので、煩雑な書類申請などはしなくても大丈夫です。
一方で、国民健康保険はフリーランスや自営業の個人が直接加入の手続きをしなくてはいけません。
健康保険は、会社員や公務員が加入する保険です。一方で、国民健康保険はフリーランスや自営業が加入する保険です。
被保険者 | |
---|---|
健康保険 | ・会社員 ・公務員 |
国民健康保険 | ・フリーランス ・自営業者 |
したがって、フリーランスの一種であるフリーランスは国民健康保険に加入しなくてはいけません。
入院治療費用
フリーランスの加入する国民健康保険と健康保険で同じ点として、治療費の自己負担の割合が挙げられます。
一般に知られているように、保険診療の範囲で医療機関を受診する場合には、自分で支払わなくてはいけない金額は医療費の3割です。
また、義務教育が始まる前の子どもや70歳以上の人の自己負担割合は一般には2割と定められています。
高額療養費
1ヶ月の医療費の自己負担額が一定の額を超えると、高額療養費という制度を使って、超過分が請求に基づいて、払い戻しされる制度があります。
この高額療養費についてもフリーランスの加入する国民健康保険で受けとることができます。
出産一時金
出産一時金とは、出産した時に42万円の手当を受け取ることができる制度です。
このお金も国民健康保険、健康保険関わらず、諸条件を満たすことで受け取ることができます。
傷病手当金
国民健康保険では保障されない内容として、傷病手当金というものがあります。
傷病手当金とは、被保険者が病気や怪我によ3日以上休業してしまい、給料が受け取れない時に支払われます。
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被保険者が病気や怪我によ3日以上休業してしまい、給料が受け取れない時に支払われるもの
病気で休んでいるにも給料が支払われている場合には、傷病手当金は支給されませんが、給料が傷病手当金未満の時には、その差額が支給される仕組みです。
フリーランスの加入する国民健康保険では、傷病手当金は受け取ることができません。
出産手当金
出産手当金とは、出産のために会社を休まなくてはならない期間で会社からの給料が入らない場合に、1日あたりの給料の2/3を支給することで保障する制度です。
赤ちゃんの出産予定日の42日前から生まれたあと56日までの期間と、出産予定日のズレを考慮して、出産手当金が支給されます。
この出産手当金をフリーランスの加入する国民健康保険では受け取ることができないのです。
扶養について
保険が必要なのは、あなただけではありません。
配偶者や子ども、家族がいる場合には、その家族の医療保険も必要ですね。一般に親族から経済的援助を受けることを扶養と言います。フリーランスとして一家の稼ぎを担っているのであれば、あなた自身が家族を養うことになります。
会社員であれば、扶養家族の公的医療保険は手続きなく行われているのですが、フリーランスの加入する国民健康保険には、扶養という概念がなく、家族の分も同じように国民健康保険に申請する必要があるのです。
このため、世帯人数の増加に従って、保険料も高くなります。
フリーランスのための民間医療保険入門
民間の医療保険の役割
民間の医療保険の役割は、公的医療保険制度ではカバーされない範囲を保障することです。
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公的医療保険制度ではカバーされない範囲を保障すること
例えば、長期間の入院の時に発生するお金は治療費だけではありません。治療費の他にも、入院費用や、病院での食事代などが必要になります。
しかしながら、公的医療保険には治療費が3割負担になる仕組みはありますが、入院のためのベッド料金や病院食のためのお金は含まれていません。
公的医療保険制度だけでは、これらの費用を全て自己負担にしなくてはいけなくなってしまうのです。
このような公的医療保険のカバーできない部分をカバーするために、民間の医療保険があるのです。
種々の民間医療保険について
民間の医療保険にも様々なタイプがあります。
民間医療保険を選ぶ上では、大きく、終身医療保険と定期医療保険の特徴と違いについて理解するといいでしょう。
終身医療保険
終身医療保険は、被保険者が亡くなるまで一生涯保障する保険です。
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被保険者が亡くなるまで一生涯保障する保険
この保険の場合には、加入時から保険料が一律で、高齢になっても保険料が上がることもありません。
その名の通り終身で保険が適応されるので、安心できる保険のタイプではありますが、定期医療保険と比較すると保険料が高くなる傾向にはあります。
定期医療保険
定期医療保険は、一定の保険期間を定めて、保険料を支払うタイプの保険です。
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一定の保険期間を定めて、保険料を支払うタイプの保険
終身保険よりも価格が低い傾向にありますが、更新の時には年齢やその時の健康状態を加味して保険料が高くなる傾向にあります。
また、一定以上の年齢に達するとそれ以上更新することや新規で契約することができなくなる可能性もあります。
特約について知ろう
特約を付加するとその分支払わなくてはいけない保険料は増えますが、万が一の時にどのような保障や治療を受けたいかを考えて、契約することも検討してみてはいかがでしょう。
ただし、特約はメインの保険に付加するものなので、メインの保険の期限が切れると、自動的に特約もの契約も期限が切れてしまうことに注意しましょう。
通院特約
通院特約とは、怪我や病気で入院して、退院後にも病院に通院する場合に給付金が支払われる特約です。
この特約では、入院して退院するという経過がないと給付金をもらうことができません。
先進医療特約
先進医療の中には、一般の医療保険では利用できない治療があります。
そんな治療の中でも厚生労働大臣が先進医療として定めた治療を受ける場合に、この特約を契約していると、治療費が支払われるようになります。
女性疾病保障特約
女性特有の疾患に対する特約が、女性疾病保障特約です。
乳がんや子宮体癌、子宮頸がん、子宮筋腫などは、女性特有の病気です。
これらの病気が原因で入院した場合に、通常の入院給付金に特約分の給付金が上乗せされます。
がん特約
がん特約はその名の通り、医療保険にがんの保障を上乗せする特約です。
次に説明するがん保険としばしば混同されがちではありますが、がん特約とがん保険の違いは、特約は主契約に付加するものであり、主契約が終了すると自動的にがん特約も終了するというところです。
一方でがん保険はそれ単体で保険商品なので、当たり前ではありますが、契約期間はがん保険の契約期間だけ保障されています。
三代疾病保障特約
三大疾病とは、がん(悪性新生物)、急性心筋梗塞、脳卒中の3つの病気のことを指します。
これらの疾患を患う人口は多く、歳を取るにつれて、その割合は高くなります。
この特約では入院した場合に、以降の保険料の支払いが免除となり、保障が一生涯続きます。
フリーランスのためのがん保険入門
医療保険としばしば混同されるのが、がん保険。がん保険はがんの治療等に特化した保険ですが、その特徴についてまとめてみましょう。
がん保険はその名の通り、がんに対する保険です。したがって、がん以外の病気に対してはこの保険が適応されることはありません。
一方で、がんの治療が始まると公的医療保険や民間医療保険のみではカバーできないお金をがん保険は保障しています。
がんの治療で入院が長期間になってしまった場合には、医療保険では入院日数に制限がかかっています。超過してしまった日数は医療保険ではカバーできません。
一方でがん保険は入院日数には限度がないので、通常の医療保険よりも保障が手厚くなっています。
- がん以外の病気には適用されない
- 公的医療保険や民間医療保険のみではカバーできないお金を保障している
- 入院日数に制限がない
平均寿命が長くなっている現代、日本人のおよそ2人に1人は生涯でがんに罹患すると言われています。
ただ、いつがんになるのか、どの臓器ががんになるのかは誰にもわかりません。
がん保険に入るための金銭的なコストと年齢によりがんになる確率などを考えて、一人一人がいつがん保険に加入するのが望ましいのかを判断しなくてはいけないのです。
まとめ
最後に、この記事でのポイントをまとめてみましょう。
この記事では、医療保険についてまとめました。
特に知っておくべきことは以下の4点です。
- 医療保険には公的医療保険制度と民間の医療保険がある
- フリーランスは国民健康保険に加入する必要がある
- 民間の医療保険は公的医療保険制度をカバーする役割がある
- がん保険はがんの治療に特化した保険である
もちろん、フリーランスとして働くのであれば、自分の健康管理に余念がないことが基本です。
しかしながら、いくら健康に気を使っていても、病気になってしまう可能性は少なからずあります。
しっかりと自分自身の健康のセーフティネットを構築して、万が一身体に何か問題が起きてしまった時にも、自分自身や家族の生活を維持するために準備することが大事ですね。