データサイエンティストは年収が高い職業として知られています。
地域別に見ると都会では600万円から670万前後、地方では690万円から700万円台後半と高めとなる傾向があります。またデータサイエンティストが対象とするデータには色々な種類がありますが、これらの種類別に収入の差は見られません。
データサイエンティストの仕事はデータを分析し、そこから有益な結果を引き出すことです。そして、その引き出した結果について、しっかりと明確な説明ができなければなりません。また、その結果の品質保証の基準となるものを示す必要もあります。
そのため、数学、統計学、可視化などの多種多様な手法を心得ておかねばならず、多くの知識を要求されるので大変な勉強が必要ですが、来るべきAIの時代には必ず必要となる将来性は抜群の職業でもあります。
そんなデータサイエンティストについて詳しく説明してみましょう。
データサイエンティストの平均年収
データサイエンティストの収入の全国平均は697万円と国民平均の441万円を大きく上回っています。
これだけでも高収入であることが分かりますが、地方によっては774万円(兵庫県)という所もあります。正社員だけに限ってみると、平均年収は730万円で、実に国民平均の1.6倍近く高い収入を得ています。
派遣社員でも平均時給は2,606円となっており普通の派遣社員と比較したら非常に高額な給与が支払われています。
これらは平均値の比較ですが、実際に求人サイトを見てみると年収500万円~1,000万円、年収1,400万円~1,500万円と相当にバラツキがあります。
派遣社員でも時給1,920円から2,700円と相当にバラツキがあります。
しかし金額の低い方を見ても通常の仕事よりも高収入であることはお分かり頂けると思います。
年収・時給 | |
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データサイエンティスト全体 | 697万円 |
正社員のみ | 730万円 |
派遣社員(時給) | 2,606円 |
データサイエンティストが高収入なのはなぜ?
データサイエンティストが高収入である理由を列挙してみましょう。
人材不足のため
データサイエンティストは高いスキルを求められるため、人材が多くいません。
プログラミングのスキルやマーケティングの知識も必要なのです。
そういったスキルの高い優秀な人材を確保するためには、どうしても高収入にせざるを得ないのです。
企業内でデータ分析の需要が高くなってきているため
企業の業務システムには大量に蓄積されたデータがあります。
そして、高度成長時代が終わった現代では企業が生き残りの手段として過去の蓄積データを有効活用するのは必須事項となっていますが、それにはデータサイエンティストが必要です。
ですので、企業もデータサイエンティストには高い給与を惜しまないのです。
また既にAIを導入している企業ではデータサイエンティストがいないとAIを活用できませんので、やはり必要不可欠な存在となっているのです。
ビッグデータを扱える人材が必要
近年、各企業はビジネスに活用するために様々なデータを集めています。
現代のように消費ニーズが多様化した社会では、あらゆるデータを集めなければ消費傾向を分析できないからです。
特に大企業ほど、様々なデータを大量に集め、いわゆる「ビッグデータ」を保有しています。しかしビッグデータを分析し活用するのは、素人には出来ません。
専門家にやってもらうしかないのです。ですので、大企業ほどデータサイエンティストが必要不可欠なのです。
データサイエンティストの仕事内容
では具体的にデータサイエンティストはどういった仕事をするのかを述べてみましょう。
データサイエンティストの仕事は大きく分けて3つあります。
データの分析
蓄積されたデータを分析し、営業戦略や経営戦略に必要な情報を提供します。
ある製品についての年齢層別購買割合、月別購買割合、地域別による購買割合、その他要因となりえるもの、等を洗い出し統計化します。
そして、それらを各製品について行い全体傾向も調べます。つまり「いつ」「どこで」「誰に」「何を売れば良いのか?」 を分析し、統計としてまとめる作業です。
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「いつ」「どこで」「誰に」「何を売れば良いのか?」 を分析し、統計としてまとめる作業
また原材料の価格動向を分析し、生産コストを抑える方法を洗い出したりすることもあります。また既にAIを導入している企業ではAIに学ばせるデータの整備や選別を行う作業も担当します。
市場調査と分析
変化の激しい現代では、自社の蓄積データだけでは足りない場合があります。そこでデータサイエンティストは営業や経営の要因となるもの全ての市場調査をして分析します。
競合会社の経営状況、売上動向、開発動向などは営業や経営に直接、影響があるので欠かせない情報です。
こういった情報を市場全体から洗い出し営業担当者、経営者に提供するのも仕事です。
また世間の流行などの情報は新規製品開発の方向性や営業手法に新たな手段を提供する可能性があるので、これも欠かせない情報です。
以前のように変化の少ない時代には過去のデータ分析だけで良かったのですが、変化の激しい現代では「製品とは無関係な市場」からの情報も必要となっているのです。
問題解決の助言、立案
データサイエンティストは分析結果を提供するだけでなく、問題を解決するための方法の立案作業も行います。AIを導入していてもAIは、いくつかの選択肢と、その成功可能性を提示するまでで、最終決定は最高責任者が行わなければなりません。
そしてデータサイエンティストはAIに元となるデータを入力している立場でもあるので、その選択肢に至る経過を最も良く知っています。ですので、決定を行う方に助言を行う責任もあります。
特に市場全体、或いは無関係の市場から得たデータを織り込んで選択肢が提示されている場合、そうであることを知らない方から見たら何故、そうなるのかが分からないこともあります。この場合、選択肢の提示に至る背景の説明をしなければなりません。
従来の情報範囲内で判断することから脱却するのがAIを使う目的であり「真のニーズ」を把握することが最終目的です。
ですが、決断する方にとって「何故、そうなるのか理解できない」と、とても決断を下すことはできません。ですので、データサイエンティストの助言が必要なのです。
またAIを導入していない企業では分析結果から考えられる対応案の立案と助言は必須作業となります。なぜなら結果報告だけで担当者が適切な対応策をとれるとは限らないからです。
データ分析作業では結果の数字だけでは分からない部分が必ず出てきます。例えば、それまで全く現れなかった要素が突然出てきたことに気づくのはデータサイエンティストです。
例え、今の数字は小さくても「突然現れた要素」というのは、今後、どう展開するか分かりません。ですので、データサイエンティストはそれを担当者に助言しなければならないのです。
また担当者の中には数字は苦手と言う方もいらっしゃいます。ですので、具体的に何をどうしたら成功する可能性が高いかを言葉で説明する必要もあります。
そしてそれは、そのまま対応策の立案という形になるのです。
データサイエンティストに必要なスキルとは?
データサイエンティストはIT業界の職業ですが、データサイエンティストならでは、というスキルが存在します。
また「出来なければ仕事にならない」と言うスキルも存在します。
統計学の知識
データを集め分析すると言う作業は、従来から統計学に基づいて行われてきました。
そしてデータサイエンティストの作業の基本部分は全く同じで統計学に基づいています。
従って統計学の知識は必須となります。統計学で使われる手法は確率計算、行列処理、微分、積分などの数学が基礎になっていますので、それらの習得は大前提となります。
更に分析結果をどう、捉えるかも統計学に基づいて行う必要があります。
ITのスキル
データサイエンティストは自分でプログラムを作るのは日常茶飯事です。
ですので、プログラムを作れることは大前提となります。
またデータはデータベースに納められているのでデータベースの操作命令などの知識も必須です。
また近年ではデータ分析ツールなども登場しているので、それらのツールを使いこなすスキルも必要になります。
- プログラミングスキル
- データベースの操作命令の知識
- データ分析ツールを使いこなすスキル
ビジネスセンスが必要
データサイエンティストの仕事内容でも述べましたように「問題解決の助言、立案」をしなければなりません。
しかし、それを行うにはビジネスセンスが必要となります。
データサイエンティストが接する方々は会社内でも高位の方が多くなりますが、そういった方は必ずビジネスセンスを持っています。
その方達に助言、説明をする立場ですので、信頼性を保つためにはビジネスセンスが絶対に必要となるのです。
データサイエンティストの類似業種との仕事内容・年収の比較
データサイエンティストとよく似た職種がいくつかありますのでご紹介致します。
データアナリスト
データアナリストはデータ分析に特化した職業です。
ですので、データサイエンティストの仕事として挙げた「問題解決の助言、立案」は行いません。
つまり意思決定に全く関わらない訳です。データサイエンティストのスキルの中の「ビジネスセンス」が無くても出来る職種です。
その分、データサイエンティストよりも収入は低く平均で640万円となっています。
平均年収 | |
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データアナリスト | 640万円 |
マーケッター
マーケッターはデータ分析の結果を見て社会や市場のニーズを把握し販売戦略を練る専門家です。
つまりデータアナリストが分析しマーケッターが戦略を練る、という役割分担が出来る訳です。
マーケッターはITスキルが無くてもビジネスセンスさえあれば出来るのですが、その分、年収は安くなり平均で570万円となっています。
平均年収 | |
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マーケッター | 570万円 |
AIエンジニア
データサイエンティストはAIにデータを入力し結果を出す係です。つまり「使う人」です。
一方、AIエンジニアはAIの本体、そのものを「作る人」です。ですので、メーカーの正社員であることが多く、AIエンジニアの募集は関東だけに集中しています。
主に修士号、博士号を持つ方が中心ですが年収は意外に低く平均で587万円となっています。
平均年収 | |
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AIエンジニア | 587万円 |
まとめ
データサイエンティストは需要が高く将来性も高い高収入な職業ですが、様々なスキルが必要とされます。
ビジネスセンスという理工学系出身者が一般的に苦手とするスキルも要求されます。一方、文系出身者には数学、統計学というものが壁となってしまいます。
しかし数学、統計学というのは勉強すれば身に付けられる物です。
その一方、ビジネスセンスというのは性格が影響してくることが多く「勉強すれば身に付く」というものではありません。
つまり誰にでもなれる職業ではないのです。
だからこそ、希少価値があり需要が高いのです。
AIの普及に伴う必須要員がいなければ、日本の産業界に大きな影響が出てしまいます。ですので、IT業界は「我こそは」という方を待ち望んでいるのです。