インターネットやデジタルガジェットが普及および浸透した2020年代では、プログラマーと呼ばれる職種の存在が重要視されています。
その一方で、プログラマーの業務内容や待遇面がきつい…という印象を抱く方がいるのも否めません。
ここでは、プログラマーの仕事がきついって本当?に関する次の項目をご紹介します。
- プログラマーへの転職を検討している方
- プログラマーへのネガティブな部分が気になる方
- プログラマーがきついと言われる理由を知りたい方
- プログラマーがきついのは事実なのか?を確かめたい方
- プログラマーへの転職の流れや事前準備を把握したい方
プログラマーの仕事がきついと言われる7つの理由
プログラマーの仕事がきついと言われる理由として、以下の7つが考えられます。
労働時間が長くなりがち
プログラマーの仕事がきついとされる理由のひとつに、労働時間が長くなりがちな点があげられます。
厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査 全国調査(年結果・年度結果)」のうち、情報通信業の月間実労働時間を以下の表にまとめてみました。
年度 | 月間総実労働時間 | 月間所定内労働時間 | 月間所定外労働時間 |
---|---|---|---|
2015年 | 162.9時間 | 145.2時間 | 17.7時間 |
2016年 | 161.1時間 | 144.6時間 | 16.5時間 |
2017年 | 160.2時間 | 144.9時間 | 15.3時間 |
2018年 | 156.1時間 | 142.5時間 | 13.6時間 |
2019年 | 154.2時間 | 139.4時間 | 14.8時間 |
2020年 | 156.1時間 | 141.3時間 | 14.8時間 |
2021年 | 158.3時間 | 142.8時間 | 15.1時間 |
※事業所規模5名以上
思ったより少ないのでは?と感じた方もいるかもしれません。上記の調査はプログラマーが個人で回答したものではなく、企業が回答しているため、実情を反映しているか?については不明です。
そもそもプログラマーの業務には、納期が存在することを忘れてはなりません。納期が近づけば残業や休日出勤が求められる可能性があります。複数のプロジェクトが同時進行しているのであれば尚更です。
その一方でフレックスや時短勤務を導入する企業も存在します。どのような環境でプログラマーの業務に就くのか?次第という見方もできるかもしれません。
報酬面での不満
プログラマーがきついと言われる理由の2つめは報酬面での不満です。
前述した労働時間が長くなりがちな点とリンクしています。
厚生労働省発表の「毎月勤労統計調査 全国調査(年結果・年度結果)」より、情報通信業の月額現金給与(所定内給与)と年収を次の表にまとめてみました。
※年収=月間現金給与(所定内給与)×12(ヶ月)で算出
年度 | 月額現金給与(所定内給与) | 年収 |
---|---|---|
2015年 | 344,262円 | 4,131,144円 |
2016年 | 345,511円 | 4,146,132円 |
2017年 | 348,246円 | 4,178,952円 |
2018年 | 355,161円 | 4,161,932円 |
2019年 | 351,909円 | 4,222,908円 |
2020年 | 352,782円 | 4,223,384円 |
2021年 | 349,553円 | 4,194,636円 |
※事業所規模5名以上
上記の調査結果は情報通信業「全体の平均」であることと、残業分や賞与分を除いた金額であることをお断りしておきます。それから実際にはこの金額から社会保険や税金が差し引かれるため、手取り金額ではありません。
プログラマーとして駆け出しの時点ではあまり給与には反映されませんが、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーなどの管理業務に就くことで給与がアップするのは確かです。
健康面の不安
プログラマーの仕事は椅子に座った状態で行われるため、必然的に運動不足になりがちです。
納期の間際などは睡眠時間が削られるケースも考えられます。食事もジャンクフードが中心という方もいるかもしれません。
通勤時に徒歩の機会を増やす、早朝や休日に軽めの運動をする、日々の食事を気にかけるなどの工夫を施すことをおすすめします。
人材不足の業界である
IT業界そのものが人材不足であることも、プログラマーがきつい…というイメージにつながっているかもしれません。
経済産業省が2019年3月に発表した「IT 人材需給に関する調査」によりますと、2030年には787,000人の人材不足が予想されています。
需要と供給の差(需給ギャップ) | |
---|---|
2020年 | 412,000人 |
2025年 | 584,000人 |
2030年 | 787,000人 |
※IT需要3%~9%増、生産性上昇率0.7%での試算結果
プログラマーは専門職であるため、一定の仕事量をこなせるようになるまでの期間が必要とされます。その間は有能なプログラマーに多くの仕事量が集中する可能性が高いでしょう。
一部の人たちの残業や休日出勤にて対応せざるを得ないことが、プログラマーの業務改善が進みにくい原因のひとつです。
常駐先での人間関係などのストレス
プログラマーの中には「客先常駐」にて、顧客先の企業に勤務する方も一定数存在します。
数ヶ月または数年にて次の企業に勤務先が変更することになるため、その都度人間関係がリセットされるのは否めません。
ローカルルールや独自の掟などが設けられている職場の場合、適応するまでの時間も必要です。
任される仕事の内容によっては、プログラマーとしてのスキルアップに結びつかないことも考えられます。
専門職のため一定以上の知識や能力が必須
プログラマーは専門職のため、一定以上の知識や能力が必須です。
プログラミング言語などを学習し、身につけるまでの期間と業務に応用する工夫が求められます。
技術や知識のアップデート
プログラマーの「35歳定年説」が都市伝説のごとく囁かれています。
これは単純に20代と比較した際の体力の衰えや、入社当時に身に着けたスキルが時間の経過とともに「トレンドでなくなる」ことが理由です。
そのため技術や知識のアップデートを欠かさないことも、プログラマーの仕事を続けるための要素となり得ます。
年齢とともにマネジメントなどの管理業務に移行するのもひとつの方法です。
未経験からプログラマーになるのはきついのか
プログラマーは専門職であることから、まったくの未経験からスタートするのは容易ではありません。
ただし本人の努力次第ではありますが、未経験から道を切り拓くことも充分可能です。
未経験からプログラマーはそもそも可能なのか
プログラマーに限らず、誰もが最初は未経験者です。
バスケットボールのシュート(レイアップなど)が思い通りに決められるようになるまで、およそ5,000回の反復練習が必要と言われています。
ある程度の時間と労力をかけることができる方なら、たとえ未経験者であってもプログラマーとして活躍できる可能性を持っていると言えるでしょう。
未経験ならではの苦労はあるのか
未経験ならではの苦労といえば、「わからないことがわからない」点に尽きるでしょう。
スマートフォンの普及と相まって、「パソコンに触れたことがない世代」の方も珍しくないようです。
- パソコンの電源ON/OFF
- ローマ字入力
- インターネット検索
新卒で入社する方は研修期間が設けられていると思われますが、上記のパソコン操作はクリアしておくことをおすすめします。
中途入社でプログラマーを目指す方は、基本的なプログラミング言語はマスターしておくと、戦力として扱われるまでの期間が短くなるでしょう。
それから上司などに質問をする際には、まずは自分なりに調べた上で「それでもわからない」点を尋ねたほうが好印象につながります。
未経験から転職するためのステップ
未経験者がプログラマーに転職するためのステップの一例をご紹介します。
- パソコンの基本的な操作を覚える
- 基礎的なプログラミング言語をマスターする
- IT業界への転職活動をスタート
入社後も知識や技術を学ぶことが多くなるかと思われますが、理解できたときや応用できた際の楽しみや快感は格別なものがあるはずです。
事前にスクールやカレッジで、プログラミングの基本を学んでおくのも良いかもしれません。セミナーなどへの参加も知識や技術のアップデートに役立ちます。
文系出身でプログラマーになるのはきついのか
プログラマーは理系の職種というイメージが強いかもしれません。
ところが実際には、最終学歴が文系のプログラマーなども一定数存在します。
先端IT従事者:30.2%
先端IT非従事者:34.6%
先端IT従事者
最終学歴 | 割合 |
---|---|
IT・情報系 | 36.0% |
IT・情報系以外の文系 | 30.2% |
IT・情報系以外の理系 | 26.4% |
その他 | 7.4% |
先端IT非従事者
最終学歴 | 割合 |
---|---|
IT・情報系 | 25.4% |
IT・情報系以外の文系 | 34.6% |
IT・情報系以外の理系 | 18.8% |
その他 | 21.2% |
先端IT技術者は経済産業省が発表した「我が国におけるIT人材の動向」にて、「デジタル人材」と定義されています。「デジタル人材」に該当するのは次の業務です。
- データサイエンス
- AI・人工知能
- IoT(Internet Of Things)
- デジタルビジネス/X-Tech
- アジャイル開発/DevOps
- AR/VR
- ブロックチェーン
- 自動運転/MaaS
- 5G
プログラマーに向いている人が持つ3つの特徴
プログラマーに向いている人が持つ特徴として、以下の3つがあげられます。
変化に対する適応能力
プログラマーの仕事では、仕様変更やそれに伴うバグへの対応などが求められます。
過去に学んだことを応用し、冷静にトラブルに対処できる方は、プログラマーに向いている人材です。
論理的思考
論理的思考もプログラマーに向いている方の特徴のひとつです。
問題が発覚した際に速やかに原因を探り当て、適切な対処を施すためには論理的思考がなければ始まりません。
何故そうなったのか?(原因)
- 同じミスをしないためにはどうすれば良いのか?(検証)
- 修正などの適切な対処
一方で論理的思考は、後天的に身につけることが可能な能力です。
たとえば「なるべく早めにがんばって提出します」と言うのではなく、「何日の何時までに提出します」と意識的に言い換えていくことから始めてみましょう。
高い集中力
プログラマーの業務の大半はひとりでの作業です。
ミーティングや打ち合わせなどを除けば、椅子に座った状態でパソコンのキーボードでタイピングをひたすら繰り返します。
スポーツ選手の”ゾーン”ほどではなくとも、プログラミングに没頭できるような高い集中力を持つ方はプログラマーに向いていると言えるでしょう。
プログラマーに向いていない人の特徴
論理的思考や高い集中力を持つプログラマーに向いている人がいる一方で、以下の特徴に当てはまる方はプログラマーに向いていない可能性があります。
パソコンなどのガジェットに苦手意識を持っている
プログラマーの業務はパソコンを扱うことから始まります。作成したアプリのテストなどで、スマートフォンやタブレット端末などのガジェットを用いるケースも少なくありません。
そのためパソコンなどのガジェットに対して苦手意識を持っている方は、プログラマーには向いていないと言えるでしょう。
パソコンで簡単な書類やデータの作成から始めていくことで、徐々に苦手意識が払拭されるかもしれません。兎にも角にも「習うより慣れろ」です。
地道な作業を継続できない
プログラマーは完成するまでプログラミングをし続ける必要があります。バグやエラーが発生した際にはその都度修正を施し、仕様変更などに対応しながら完成に至るのが大半です。
時間も労力もかかるため、地道な作業を継続できない方にはプログラマーの仕事は向いていません。
とはいえ、人間の集中力の限界は2時間ほどと言われています。学校の授業が50分ごとに休憩を挟むのと、コンサートや映画が90分ほどで完結するのは、人間が集中力を保てる時間と決して無関係ではありません。
実際には適度に休憩時間を設けることも大切です。適度に糖分を補給したり、ストレッチなどで身体をほぐしましょう。事前にその日の作業範囲を決めておくのもおすすめです。
常に会話をしながら作業をしたい
プログラマーは打ち合わせなどで会話をすることもありますが、大多数の時間はひとりで黙々と作業をすることになります。
そのため、常に誰かと会話をしながら作業をしたい方には不向きかもしれません。
将来的にプロジェクトマネージャーなどの、管理業務に就くまでのステップとして割り切るのもひとつのやり方です。
プログラマーとして入社する際に確認しておくべきポイント
プログラマーとして入社する際には、次の2つのポイントを確認することをおすすめします。
事前にプログラミングの基礎知識を学習しておく
IT業界は人材不足気味であることから、運良く入社することができたとしても、プログラミング言語やIT用語などが不明なままでは早急に作業が滞ってしまいます。
「質問をしたら必ず答えてくれる」のは当たり前ではありません。
サッカー選手がピッチの外でアップを繰り返すのは、試合に出てすぐに動けるようにするためです。
事前にプログラミングの基礎知識を学習しておくことで準備を整えましょう。
勤務体系をよく確認しておく
プログラマーとして仕事をする際、勤務体系は必ず確認しておきたい項目です。
- 勤務時間(定時)
- 残業の有無(残業時間数)
- 残業手当などの給与体系
- 年間の休暇日数
- 有給休暇や育児休暇などの取得率
企業によっては求人情報にて公開していないケースも見受けられます。必ず面接の際に明確にしておきましょう。
まとめ
ここまで、プログラマーの仕事がきついって本当?に関する以下の項目を紹介してきました。
- プログラマーの仕事がきついと言われる7つの理由
- 未経験からプログラマーになるのはきついのか
- 文系出身でプログラマーになるのはきついのか
- プログラマーに向いている人が持つ3つの特徴
- プログラマーに向いていない人の特徴
- プログラマーとして入社する際に確認しておくべきポイント
「プログラマーはきつい」というイメージがあるのは否定できません。一方で職場環境や自身の適性によって、「きつさ」の度合いが変化するのも確かです。
自身の特徴や強みを知ることと同時に、入社予定の企業をしっかりと調べることがミスマッチを防ぐことにつながります。